SABRE

太極拳は、かつては中国の古代武術としてその歴史が始まりましたが、今日では世界中の、すべての年齢の人々に愛される健康維持のための運動へと進化しています。この流れるような動きが持つ脳と身体への影響について、深く掘り下げてみましょう。

アジアの国々を始め欧米の一部の国々では、早朝 静けさの中の都市や公園で太極拳のクラスが行われています。参加者たちは、ゆっくりとした動作で体を動かし、深い呼吸と共に精神を集中させています。

太極拳の一連の動作は、見ているだけで心が落ち着くような流れとリズムを持っています。これらの動作と形は、古代中国の動物や自然界の観察からインスピレーションを受けています。「白鶴が羽を広げる」形や「野馬のたてがみを分ける」などの形は、これらの生き物の動きを模倣しており、我々人間もまた自然界の一部であるという感覚を認識させてくれます。

太極拳は元来 中国の古代武術として発展しましたが、その根底には道教の思想が流れています。道教哲学の核心にある「太極」は、全宇宙の根本原理を象徴しており、「陰」と「陽」の相互作用から全てが生まれるとされています。太極拳はこの「陰陽調和」の概念を動きに取り入れており、それぞれの動作が相反する力のバランスと統合を求めるものとなっています。また道教の「無為自然」という教えもとても重要な役割を果たしております。これは、力み過ぎず、自然体で行うことを意味し、太極拳の動作においても、無理な力を使わず、流れるような動きが求められます。このようにして、太極拳は道教の「道」に沿った形で身体と心の調和を図ります。太極拳は気功の一種であり、古代中国の伝統的な自己修養とエネルギー保存の実践法の総称でもあるり、同時に心と体のエクササイズである。ゆっくり、やさしく、流れるような体の動きを行い、動きと呼吸に集中し、無の状態を作り出し、一種の瞑想状態に入ることが望ましいとされている。

この心と体の両方に対する深い影響を与える柔らかな一連の連動は、バランスの向上や心血管健康のサポート、脳認知機能の向上などフィジカル面での影響だけにとどまらず、多くのメンタルへの好影響も述べられており、これらは太極拳が持つ滑らかな連動性ある均整の取れた動きと、連動に沿って行われる心を落ち着かせる呼吸法によるもので、精神と体の調和、そして内的エネルギーのコントロールと強化を目指す実践方法です。

道教では、生命エネルギーである「気」の流れを重視します。太極拳では、この気を意識し、体内を循環させる技術が基本にあります。呼吸法を通じて気のコントロールを学び、内部のエネルギーバランスを整えることができます。

そして太極拳を習慣化する事で体内に張り巡らされている経絡の気の流れが活性化され、エネルギーの質が向上します。この反復動作は、消化促進や内臓のマッサージ効果を促し、体全体の健康を支え向上を促してくれます。

太極拳は、その流れるような動きが私たちの内側に秘められた「気」の流れを整えるために設計されています。この「気」とは、中国医学において体全体の健康と調和を司る生命エネルギーのことを指します。気の流れがスムーズであることは、体調が良く、精神的にも安定している状態を示します。一方で、この気の流れが滞ると、さまざまな身体的、精神的不調が生じるとされています。

太極拳の基本は、この気の流れを促進し、経絡—気が流れるとされる体内の気の通り道、任脈や督脈等を通じて全身にエネルギーを行き渡らせることにあります。経絡は体内を網の目のように走っており、それぞれが特定の臓器や体の部位と関連しています。太極拳の練習により、これらの経絡が刺激され、気のバランスが整えられるとされています。

また太極拳は動く瞑想とも呼ばれており、動作の一つ一つに心を集中し、内観することで、精神的なクリアリングとともに、深い精神状態へと導かれます。これは道教の瞑想技法とも密接に関連しており、心身の健康だけでなく、身体と精神の調和、エネルギーの自然な流れ、内面的な平和を追求する点で共鳴しており、自己の内部と深く対話し、生命力を呼び覚ますための道とも言えるでしょう。

太極拳に関する研究は、スタンフォード大学やハーバード大学など、世界中の有名な研究機関でもっと行われており、これらの研究は、太極拳がいかにして心身の健康を向上させるかを科学的に解明し、その効果をさらに裏付けています。太極拳の実践は、道具を必要とせず、どこでも、誰にでも、そしていつでも始めることができます。

研究の結果等によると、太極拳は関節リウマチの人などの痛みを軽減するのに良いという研究結果を始め、心血管疾患の予防や心身不調の症状を軽減し、肉体的・精神的に健康状態の改善にも役立つという研究結果もある。更に脳への影響もう示唆されており、特に認知症の予防や進行を遅らせる方法としても注目されている。これは一連の動作が、情報を理解し反応速度や注意力、そして記憶力などパフォーマンスを向上させ、認知機能を高めることができるという研究結果がある。

最初の数ヶ月は、太極拳の動作を覚えてゆく事に四苦八苦するかもしれません。ただ継続して続けて行くうちに、やがて習慣となり、何かが少しずつ変化している事を感じれる時期がやってきます。数ヶ月の期間を経て数年継続する中で、普段無意識に行なっている呼吸が、なんとなくトーラスのような、微細に変化している感覚に目覚めるかもしれません。　

そんな太極拳を是非皆さんの日々の生活習慣の一部として取り入れてみては如何でしょうか。

太極拳の流派と式

太極拳は、中国の古典的な内家拳の一種であり、深い呼吸とゆっくりとした流れるような動作によって身体と心の調和を目指す内面的な武術です。楊、武、陳、呉などの主要な流派があり、それぞれに独自の特徴があります。一般的な太極拳のルーチンには、24式、32式剣、48式、86式などが含まれ、各ルーチンは特定の目的やレベルに合わせて設計されています。

24式太極拳

最も普及している形の一つで、初心者が基本を学ぶのに適しています。この短い形は、時間が限られている人や、基本的な太極拳の原則を習得したい人に最適です。

32式太極剣

これは剣を用いた太極拳で、剣法に特化した動作で構成されています。流れるような剣の動きと身体の調和を求め、より洗練された技術を追求します。

48式太極拳

48式は楊、武、陳、呉の四大流派の技術を組み合わせた長いフォームです。より多くの動きと技術のバリエーションを含み、中級から上級の学習者に適しています。

86式太極拳

楊式太極拳の伝統的な長いフォームで、滑らかでゆったりとした動きが特徴です。一連の動作が連続しており、内外の調和に重点を置いています。

これらの形式は、各流派の特徴的な技術や哲学を反映しており、練習者が段階的に技術を進化させる方法として設計されています。太極拳の練習は、動きの中での静けさ、動作の流れや精度、内面のエネルギーの調和、そして最終的には自己防衛スキルの向上を目的としています。太極拳は身体的な健康だけでなく、精神性の向上にも寄与することができる、深い文化的遺産を持つ武術です。